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抗生物質に変わる新規抗菌薬の開発

2000年に大限産業大学の産業創出委員会で認められたペンチヤー第1号である株式 会社オーエスユー(大学の頭文字から命名)では,長年にわたり燃焼合成という方法 で自然界では天然に存在しない炭化物や窒化物といった非酸化物セラミックスを人工合成する研究を行ってきた。この中の1つとして開発途上国において雨水を安全に殺菌できる飲料水化用セラミックスを開発し,フィリピンやケニアにおいて汚染された 水を飲んで亡くなる子供達を救う事業を行った。

•セラミックスなどの無機化合物は分子量が数十で有り,低分子医薬品よりさらに小さく,共有結合性ゆえに化学的安定であり摂取しても生体などとの反応は考えられず,単に排泄されるたけで薬理効果はないというのが一般常識であり,今まで医薬品目的 で試されたこともなくまさに盲点であった。

•近年,薬剤耐性(AMR)が世界的に拡大し,公衆衛生に重大な影響を与えている一方で, 抗生物質を含む新規の抗菌薬等の開発は停滞している。このままではAMRに対する対抗手段が枯渴するとの懸念が高まっている。2015年に英国政府(オニール委員会)がまとめた2050年の抗生物質が効かない耐性菌感染症死t者数は世界で1000万人以上と推定し,ガンの死亡者数800万人を超えると警告している。世界経済に与える損失は100兆ドル(日 本円て約1京円以上)にのほると報告されてい る。これらの脅威に対し,世界保健機構(WHO)も製薬企業だけに任せず,国が主 体的に抗生物質に代わる新規抗菌薬の研究開発に取り組むよう求めている。しかし近 年の薬剤開発には1000億以上の開発费と15年以上の期間 がかかっており,創薬 は最難事業と評されるほどである。長期服用する慢性病薬や抗がん剤と異なり,細菌感染症治療薬は1〜2通間程度の短期服用であり,数年後には新たな耐性 菌の出現を 繰り返す抗生物質の宿命では開発費が回収できないため,製薬メーカーは積極的では無い。しかし人命を救3医薬品は経済的論理のみによって語られるべきでなく,ここで果たすべき役割を担うものが,まさに非営利である大学等の教育研究機関であり,大学発ベンチヤーは今こそその存在価値が問われている。

•このような時代背景と切迫したAMR問題を受けて,抗生物質に代わる新しい抗菌薬 を作り出すことが本研究の目的である。具体的な問発目標は,1)病原性細面の種類 によらず第一選択薬となる抗菌スぺク卜ル幅が広い抗菌薬でおること,2)抗生物質 が効かない耐性菌に効くこと,3)抗生物質のような耐性菌が発現しない作用機序を 有する抗菌薬で&ることI 4)抗 生物質のよ5な副作用が無い安全な抗菌薬であるこ と,5) AMRで特に被害を受ける問発 途上国でも使用可となる安価な薬であること,など基本5要件を全て満たす新規抗菌薬の開発である。どれ一つを取り上げても 容易でない。このことから今までの延長線上で副薬 研究を行5ので無く,パラダイムシフ卜を起こせる全く新しい切り口の取り組みが求めら れる。すなわち医学系や薬学 系以外の分野における発想を組み込むことが重要となる。

•燃焼合成法ては天然に存在する酸化物(Oxide)とは異なり,自然界には存在しない 炭化物(C arbide) ,窒 化 物( Nitride) ,ホウ化 物( boride),ケイ化物 (Silicide)など非酸化物セラミ ックスを人工合成できる。これらの中でも炭化チタン(TiC)を水に投入すると,セラミック水中にはヒドロキジラジカル(•OH)と メチルラ ジカル(•CH3)が生成する。詳細な作用機序は本研究実施で明らかにしていくが,酸化力 の強いラジカルが殺菌効果を発揮するものと推定される。さらにセラミック水を用いたin vitro試験で正常細胞(繊維芽細胞を選択)は順調に増殖するものの,6種類のガン細胞 はすべて強い増殖抑制効果が見られ,数日後からガン細 胞は死滅減少する結果を得ている。 エピジェネテイクス分野ではC メチル化が重要な役割を果たすとされており,今回の結果 もセラミック水中の(•CH3)が何らかの役目 を担っている可能性が高い。細菌の生理活性に対しも同様の阻害効果を有することが 考えられる。炭化物を用いる意味は(•CH3)の炭索源 となることである。

【研究成果】
✓燃焼合成によりメチルラジカル産生用セラミックスを開発完了
✓これを水に添加すること でメチルラジカル水が製造可能
✓この水では細菌が耐性化しないことを,大腸菌を用いた 繰り返し試験で確認
✓一般細菌たけでなく MRSAやVRE等の耐性菌に対しても有効であ ることをin vivoで確認
✓ラッ卜および犬での,経口投与および血中投与のいずれも無毒性を確認
✓ AMESおよび 小核コメッ卜試験により逋倍子毒性を有しないことを確認
✓約1世紀ぶりの抗生物質に代 わる新規抗菌剤の開発に成功

【今までの抗生物質にないセラミック水の特徴】
I     細菌種を問わない広域スぺク卜ラム
II   ラッ卜への血中投与で,抗生物質より殺菌作用を有する有効性
III  エピジェネティクスに 基づく作用機序による非耐性
IV   ラッ卜および犬での安全性試験の結果,無羞性

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